【読書×色】「ババヤガの夜」~紫と緑と黒の傷跡  


IROKORO

ご覧いただき、ありがとうございます。カラーリストの千葉真須美です。

今日は、世界最高峰のミステリー文学賞である英国推理作家協会賞(ダガー賞)を、日本人が初めて受賞したことで話題となった「ババヤガの夜」をご紹介します。一体どんな小説かとワクワクしながら手に取りました。


■作品情報

・タイトル:ババヤガの夜
・著  者:王谷 晶
(あらすじ)
暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會にその喧嘩の腕を買われる。会長が溺愛する一人娘の運転手兼護衛を任されるが、彼女を過酷な運命に縛りつける数々の秘密を知り―。(本書より)


■感想

一言で言うと、ぶっ飛んだ作品です。あまりの衝撃とスピード感で、二時間ほどで一気読みしました。面白かったです!

主人公の依子(22歳)は、身長は170cm超え、体重75kg前後で、東大寺南大門の金剛力士像のような腹筋を持つ―と、この設定だけで驚きですが、さらに暴力を欲するという、今までに見たことのないヒロインです。彼女が、暴力団会長の娘で、自分と正反対の、まるで人形のような少女・尚子と、暴力に満ちた世界で心を通わせていく様子に切なさを感じました。

また、ミステリー部分もよくできています。ただし、バイオレンスシーンや、放送禁止用語が連発しますので、これらが苦手な方はご注意を。


■注目カラー:紫・緑・黒と、クレヨンの質感

暴力団組員たちと激しい乱闘となった翌朝の依子の顔が、こう表現されています。

『…まだらになった内出血は予想以上にひどい有様だった。地肌が白いせいもあり、変色が目立つ。子供が顔の上で紫と緑と黒のクレヨンを使ってめちゃくちゃに落書きをしたようだ。』

内出血している皮膚を観察すると、確かに青や紫など複数の色が複雑に混ざり合っていますが、紫・緑・黒の組み合わせは、相当ひどそう。ぞっとする配色で、恐怖感が高まります。
加えて、『クレヨンを使って』ですから、油分の多いクレヨン特有の色のデコボコや、クレヨンのカスの質感も加わって、表面の傷もかなりのものであることが想像されます。

彼女の暴力性を象徴するかのような、強烈な色の表現だと思いました。


■こんな方におすすめ

・話題の受賞作に興味のある方
・バイオレンス作品に抵抗がなく、迫力ある小説を求めている方
・女性主人公の強烈な生きざまに触れてみたい方


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