【読書×色】「BUTTER」~黄金色の味わい
ご覧いただき、ありがとうございます。
今回ご紹介するのは、世界的ヒット作となった「BUTTER」です。この作品は、日本人で初めてWaterstones Book of the Year (英国の書籍小売チェーン Waterstones が主催する年間書籍賞。日本の本屋大賞に近い賞です。)を受賞し、ダガー賞でも受賞作「ババヤガの夜」とともに最終候補まで残りました。バターがミステリーにどう絡むのか、興味深く手に取りました。
■作品情報
・タイトル:BUTTER
・著 者:柚木 麻子
(あらすじ)
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。(amazonより)
■感想
「カジマナ」とは、いったいどんな女性なのか?カジマナに影響され、心と体のバランスを失っていく里佳と、友人の伶子はどうなるのか?ストーリーの展開に引き込まれる一方で、「食」についても考えさせられました。
多くの人々が食べることに関心を寄せています。行列のできるお店やお取り寄せグルメの紹介から、健康・体型維持のために食事法まで、食に関する情報を目にしない日はない程です。
獄中のカジマナは食べることについてこう語ります。自分の心や身体に耳を澄ませ、その時一番食べたいものを好きなだけ食べ、嫌いなものは決して食べない、そこから、自己愛や自信が生まれる。そして、自分の身体には自分の好きなものがたっぷり詰まっていると。
こんな考え方もあるのかと、軽い衝撃でした。しかし、自分が本当に食べたいものは何かを考えることは、自分自身と向き合う良いきっかけになると思いました。自分は今どんな状態か。何を必要としているのか。月に一度でも実践してみれば、自分を理解し、解放することにも繋がるかもしれません。食べることの奥深さ、そして怖さまでも感じる作品でした。
■注目カラー:味わいを表す黄金色
『やがて、彼女の言った通り、溶けたバターが飯粒の間からあふれ出した。それは黄金色としか表現しようのない味わいだった。』
里佳がカジマナから教わった「バター醤油ご飯」を試したときの表現です。
バターが溶けないうちに口に運び、口の中でひんやりとしたバターが次第に溶けて、あふれ出す。溶けたバターの黄金色は見えないけれど、味覚として黄金色を感じる。味覚を色で表現している点が面白いですし、とてもインパクトがあります。
光り輝く黄金色から、まろやかでいて力強く、高貴さまでも感じる最上の味わいをイメージし、バター醤油ご飯を思わず試したくなりました。
■こんな方におすすめ
・ミステリーやサスペンスが好きな方
・食をテーマにした小説に興味がある方
・話題の受賞作をチェックしたい読書好きの方
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