【読書×色】「PRIZE―プライズ―」~ピンクを嫌う心理は?


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ご覧いただき、ありがとうございます。

芥川賞、直木賞といえば、出版業界の一大イベント。今回ご紹介する作品は、直木賞受賞に燃える一人の人気女性作家の物語です。


■作品情報

・タイトル:PRIZE―プライズ―
・著  者:村山 由佳

(あらすじ)
天羽カインは憤怒の炎に燃えていた。本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。私の、何が駄目なの? …何としてでも認めさせてやる。全身全霊を注ぎ込んで、絶対に。 (amazonより)


■感想

この作品には、直木賞受賞を熱望する一人の女性作家の物語を中心に、出版業界の裏側が描かれています。作家と編集者の関係、直木賞・芥川賞の歴史や審査方法など、本好きにはたまらない内容が詰まっていて、大変面白く、一気に読んでしまいました。

何といっても主人公カインの直木賞に対する熱量に圧倒されます。人気も実績も十二分にあるのに、どうしても「直木賞」が欲しい!なぜ、そこまでこだわるのか?著者の村山由佳さんは、承認欲求を描いたとおっしゃっていましたが、私は彼女の作品に対する愛を感じました。

カインは、自分のありったけを妥協なく注ぎ込んで産み出した作品を「我が子」と語ります。そんな作品を、直木賞という栄冠を受け取るのにふさわしいと、世間の人に認めて欲しい。彼女の直木賞への執着の根底には、自分の作品への愛があるのではないでしょうか。また、そこまで作品を愛せる彼女を、羨ましくも感じました。


■注目カラー:濃いピンクは下品?


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書店でのサイン会終了後、反省会の席で、カインは会場に飾られた花についてこう発言します。

『あとそれからね、あのお花。…何ですか、あの下品なピンク色。…私が濃いピンクを好きじゃないってこと、前もって伝えといてくれてもよかったんじゃないのかな』

濃いピンクは、とても女性的な色です。女性的と言っても、淡いピンクの優しい女らしさとは違い、艶やかで妖艶な女性性を強く感じるイメージです。

誰に対してもハッキリとした物言いをするカインは、『女性の作家なんて、中身はみんな男だと思うけど』と語ります。そんな彼女にとって、濃いピンクは女性をアピールして男性に媚びるようなイメージが感じられ、下品に繋がっているのではないかと思います。

「嫌いな色」にもカインの男前な性格が表現されている、そう感じました。


■こんな方におすすめ

・情熱的なお仕事小説が好きな方
・小説家や編集者など、出版業界の裏側を知りたい方
・直木賞、芥川賞をはじめとする賞に興味がある方


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