【読書×色】「イクサガミ 地」~死闘を彩る黒・白・赤

書籍『イクサガミ(天・地・人・神)』全4巻の表紙。色彩が印象的なデザイン

Netflixで岡田准一さん主演のドラマが放映中の、エンタメ時代小説「イクサガミ」。今回は、シリーズ全4巻の中で、私が特に惹かれた色の表現とそこから生まれる効果をご紹介します。


■作品情報

・タイトル:シリーズ全4巻
      第1巻 イクサガミ 天
      第2巻 イクサガミ 地 *今回取り上げた作品
      第3巻 イクサガミ 人
      第4巻 イクサガミ 神

・著  者:今村 翔吾

(第1巻 あらすじ)

明治11年。深夜の京都、天龍寺。腕に覚えがある292人が集められた。告げられたのは、「蠱毒」〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。

各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。「奪い合うのです! その手段は問いません!」

剣客・嵯峨愁二郎は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。(amazonより)


■感想: 加速する面白さ

「イクサガミ」は、エンタメ時代小説という普段あまり手にしないジャンルなので、読みはじめは少々慣れない感覚もありましたが、次第に面白さにグイグイ引き込まれ、全4巻を一気に読みました。

第1巻では、大金を目当てに繰り広げられるデスゲームという点で、韓国ドラマの「イカゲーム」を連想しました。命をかけた戦いにハラハラドキドキです。

また、京都から東京へとバトルを繰り広げながら向かう旅の間には、仲間ができ、強くなり、心の成長があるという、ロールプレイングゲームの面白さも感じました。

登場人物もみな個性的で、さまざまな背景や強力な得意技を持ち、それぞれに魅力があります。お気に入りのキャラクターが戦いに敗れると、かなりがっかりしました。

加えて、このゲームは誰が何のために行っているのか、嵯峨愁二郎が引き継ぐ剣の奥義「京八流」の謎など、ミステリー要素もあります。そして、第4巻で驚きの展開。

読み進めるほどに面白さが増す極上のエンターテイメントでした。


■注目カラー:死闘の緊迫感を伝える色の表現

この作品で特に印象深かったのは第2巻「イクサガミ 地」に登場するバトルシーンの色の描写です。

愁二郎と、その宿敵貫地谷無骨の戦いの場となった建物に、火災が発生します。

『広がった焔は窓掛け(カーテン)にまで纏わりつき、黒白入り混じった煙を吐き散らしている。もう十分も経たずして執務室は赤に蹂躙されるだろう。』

黒、白、赤がテンポよく並ぶ緊張感と疾走感のある表現に、思わず唸りました。


・黒・白・赤のダイナミックな配色で死闘を盛り上げる

黒・白・赤の3色を並べた配色例。強いコントラストとダイナミックな印象を生むカラーサンプル

黒、白、赤の3色の取り合わせは、ダイナミックなイメージを与える配色です。この3色を用いることでインパクトが強まり、迫力と強さ、カッコよさが伝わってきました。


・シンプルな基本色名を並べてスピード感を演出

特に「上手い!」と思ったのは、黒、白、赤の基本色名を用いている点です。

時代劇はその時代の情緒を伝えるために伝統色名が多く使われます。この『イクサガミ 地』でも、

『瑠璃と灰を混ぜたような空の下』
『生地がよいからか青み掛かって見える。檳榔子黒(びんろうじぐろ)と呼ばれるものだ。』

※檳榔子黒(びんろうじぐろ):ビンロウの実(檳榔子)で染めた青みを含んだ黒色

など、伝統色名が登場します。

しかし、この場面では、焔の色を「紅(くれない)」などではなく「赤」とし、黒、白、赤と誰もがわかりやすい基本色名を並べているため、読み手は瞬時にその色と光景を思い浮かべることができます。これは、情緒よりもスピード感を優先させた印象です。


今回取り上げた色の表現は、作品に描かれたシーンを想像する時、光景の色彩だけでなく、戦いの緊迫感をも強く感じさせるものだと思いました。


■こんな方におすすめ(3つ)

・時代小説は初めてだけど、エンタメ性のある作品に挑戦してみたいという方
・「イカゲーム」や「バトル・ロワイアル」など、デスゲーム系の物語が好きな方
・キャラクターの成長や人間ドラマに惹かれる方


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