【読書×色】「つむじ風食堂と僕」~色が伝える職業観
今回は、自分の仕事を語る大人たちの言葉の中に、印象的な色が登場した、吉田篤弘さんの「つむじ風食堂と僕」をご紹介します。
■作品情報
・タイトル:つむじ風食堂と僕
・著 者:吉田 篤弘
(あらすじ)
少し大人びた少年リツ君12歳。
つむじ風食堂のテーブルで、町の大人たちがリツ君に「仕事」の話をする。
リツ君は何を思い、何を考えるか…。(amazonより)
■ 感想: 自分の仕事についてふと考える
この作品は、吉田篤弘さんの代表作、月舟町シリーズ三部作のスピンオフ作品(番外編)で、二作目「それからはスープのことばかり考えて暮らした」に登場するサンドイッチ屋さんの息子、リツ君が主人公です。
リツ君が週数回通うつむじ風食堂で、居合わせた大人たちが彼に自分の仕事について話します。
文房具屋、肉屋、八百屋、新聞記者、ダンサーなど、さまざまな職業の人たちが語るのは、なぜその仕事を選んだのか、その仕事はどんな役割を担っているのか、どんな思いで働いているのかなど。また、好きなことを仕事にするべきという人もいれば、そうでない人もいます。
仕事に対するそれぞれの意見は、大人が読んでも面白く感じます。そして、もし私なら自分の仕事をどのように語るだろうと想像してみたりしました。
本書は筑摩書房のちくまプリマー新書から出版された作品で、主に十代の読者に向けた内容となっています。既に職業についている大人たちにとっては、かえって新鮮に感じられる作品だと思います。
とてもわかりやすく優しい表現で、仕事選びの本質を伝えているように感じました。
■ 注目カラー:豆腐屋さんの白と、果物屋さんのカラフルさ
リツ君に自分の仕事を語る大人たちの中で、お豆腐屋さんはこのように話します。
『豆腐っていうのは、きれいな冷たい水が命なんだよ。冷たい水はこちらの身も引き締まるし、豆腐は白いしね、なんとも清らかな気分になる。』
これに対し、果物屋さんはこう言います。
『もちろん、豆腐の白もいいでしょうけど、果物屋は、いつも鮮やかな色に囲まれて楽しいもんですよ』
豆腐屋さん=白、果物屋さん=カラフル、当然といえば当然です。
しかし、店主たちが「白はいいよ」「鮮やかな色は楽しいよ」と語ることで、二人の仕事への向き合い方が色を通して伝わり、二つの仕事の世界がより魅力的に感じられます。そして、頭の中で2つの職業が色に置き換わります。
この後、果物屋さんは、白は静かさ・静、鮮やかな色はにぎやかさ・動とイメージを展開して話を進めるのですが、頭に描かれた色によってイメージを膨らませながら楽しく読むことができました。
■ こんな方におすすめ
・仕事選びに迷っている学生さん
・自分の仕事を見つめ直したい大人の方
・吉田篤弘さんのゆったりとした世界観が好きな方
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